広大熱工学メルマガ75号(2013.6活動報告)
広島大学大学院工学研究科 熱工学研究室
(松村・井上・神名・柳田研究室)
松村幸彦
井上修平
神名麻智
柳田高志
梅雨が明けて、いよいよ本格的に夏になりました。夏ばてが心配になる季節ですが、皆様にはいかが
お過ごしでしょうか。今年6月の活動報告を送らせていただきます。
4年生も実験結果が出てきました。11月の国際学会で発表できるかどうか、がかかっています。国
際学会での発表実績は、その後の各種の賞や、就職活動でも有効です。良い結果と、TOEICの良い点
を期待しています。その前に院試もあります。充実した夏になりそうです。
来たばかりの学生には、「卒業研究のテーマで研究室が何かを実現する手伝いをすることが大事で、
何をどうするのかしっかり指示を聞いて、間違いのないように気をつけて実験しよう」という気構え
が強く感じられます。しかしながら、研究室の目的は学生を指示通りに動かして成果を上げることで
はなく、学生に自分で考えて、判断しながら研究を進められる力をつけてもらうことですから、もう
一歩上を求めています。なぜ、こうするのか、何が大事なので何に気をつけなくてはならないか、を
考えて、自分で自分に指示が出せることが重要なのです。
このため、この時期には「どうしたらいいでしょうか?」と聞いてくる学生に「どうしたらいいで
しょう、ではなく、どうしようと思うけどどうでしょう、と聞け」と答えることが多くあります。
学生もだんだんと学んできるのですが、時にはM1やM2になってもそういう質問をする学生もあ
り、もっと厳しくしなくてはだめだろうか、と思わせられます。
指示をしっかり聞こう、という学生には、ディスカッションを録音したい、という学生も時々いま
す。実際のところ、指示を聞き落とさずに作業をすることよりも、なぜこういう指示が出されるのか
を理解してもらう方が重要です。そして、それを理解するには、聞き落とさないように指示を記録す
るよりも、その場で聞いて理解できることを理解し、わからないことは考えるという真剣さの方が重
要です。大体、会社に入ってから営業先や上司からの指導をいちいち録音できるはずもなく、また、
それを聞き直していては効率が低くて始まりません。
会社での即戦力になるように、学生を育てるように進めています。既に就職した学生の皆様からも、
リクルートの時など、折に触れていろいろと話してやっていただければ幸いです。
今回はスタッフカラムを柳田助教から送らせていただきます。また、寄稿をM1の松本龍之介様からい
ただいています。
■ スタッフカラム(柳田高志)
蒸し暑い季節になりましたが、皆様におかれましてはいかがお過ごしでしょうか。
さて、先月、欧州バイオマス会議という国際学会出席のため、初めてデンマークを訪れました。この
学会は毎年ヨーロッパで開催されているバイオマス関連の学会で、66ヶ国、1800人 以上の研究者が
バイオマスについて5日間にわたり議論する場となっております。私にとってこの会議は、様々な国
の人と会話することのできる貴重な場となっています。会話の内容は当然のことながら研究に関する
ものが多くなるのですが、私が日本人であるということから原発事故に関する質問も比較的多かった
のが印象的でした。具体例を挙げると、ドイツ人から停止している原発の動向について、オランダ人
から原発停止後のエネルギー源の変化について、オーストラリア人から東京周辺における放射能汚染
について等々で、原発事故から2年以上が経過した今でも世界的な関心事になっていることを実感し
ました。帰国時に飛行機の窓からふと外を眺めると、デンマークの洋上風力発電の光景が目に飛び込
んできました。デンマークでは国内電力の20%を風力発電で賄っているのですが、グリーンエネル
ギーの普及が進んでいることを少し羨ましく思いながら帰国しました。
さて、帰国してから原発問題が頭の片隅にあったせいか、あるいは、現在の所属が機械物理専攻とい
うこともあって日々数式に触れる機会が多いせいかわかりませんが、『E=mc^2 −世界一有名な方程
式の「伝記」』(デイヴィッド・ボダニス/ハヤカワ文庫NF)という書籍を手にしました。このE=mc^
2 という公式は、原発とつながっているだけでなく、広島・長崎に投 下された原爆に直結してお
り、日本社会に大きな影響をもたらしたものです。本書は、この公式がどのように生まれ、実用化さ
れていったのかを歴史をふりかえりつつ紹介しています。公式に使われている物理量にもそれぞれ歴
史があり、個人的にはデンマークを訪問したばかりだったこともありデンマーク人オーレ・レーマー
が光の速度(c)の予測でジャン-ド ミニク・カッシーニに喧嘩を売る話が興味をそそられました。
もし機会がありましたら、一読されてはいかがでしょうか。
取り留めもない話をしてしまいましたが、今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
■ 寄稿(松本龍之介様)
梅雨明けて息つく間もないこの暑さでは誠に耐えがたいと存じますが、皆様いかがお過ごしでしょう
か。
私は7月5〜7日の3日間、成田で開催されたThe 9th Asia Pacific Conference on Sustainable
Energy & Environmental Technologies(第9回持続可能なエネルギー・環境技術に関するアジア太平
洋会議)に参加させて頂きました。今回の国際学会では初の口頭発表ということもあり、程よい緊張
感の中で発表することができました。まだまだ英語発表には自信がありませんが、より良いプレゼン
や討論ができるように毎週のゼミに真剣に取り組みたいと感じました。
学会に参加して感じたことなのですが、海外から参加されている発表者はカンペなどを見ずにしっか
りとしたプレゼンを行っていました。しかし、日本の参加者の中にはカンペを見ながら発表している
者が見受けられました。今回の国際学会では日本のレベルの低さを痛切に感じました。
学期末ということもあり、これから大学院一年生は最終レポートやテストがあり辛い時期ではありま
すが、健康に気遣いつつ毎日の仕事をこなして行きたいと思います。
■ 6月の学会発表、講演等
<展望・解説・カラム等(査読無し)>
松村幸彦, 神名麻智: バイオマスの利用〜エネルギー変換技術〜, 粉体技術, 5(6), 516-521
(2012.6)
<国際学会発表>
T. Yanagida, Y. Unami, M. Kanna, Y. Matsumura: Phosphorus behavior during supercritical
water gasification of sewage sludge, 2CV.3.31, 21st European Biomass Conference &
Exhibition: Setting the course for a biobased economy, Jun. 3-7, 2013, Copenhagen,
Denmark. (Poster)
T. Samanmulya, Y. Matsumura: Effect of activated carbon catalyst on supercritical water
gasification of glycine, 2CV.3.36, 21st European Biomass Conference & Exhibition: Setting
the course for a biobased economy, Jun. 3-7, 2013, Copenhagen, Denmark. (Poster)
T. L.-K. Yong, Y. Matsumura: Supercritical water gasification of phenol and benzene as
lignin biomass model compound: Detailed reaction pathways and kinetics, 2CV.3.37, 21st
European Biomass Conference & Exhibition: Setting the course for a biobased economy, Jun.
3-7, 2013, Copenhagen, Denmark. (Poster)
Y. Wada, K. Oyama, T. Yamasaki, I. Uchiyama, Y. Yanamura, Y. Shimizu, Y. Matsumura, T.
Minowa, T. Noguchi, Y. Kawai: The result of 1 day level continuous testing on
supercritical water, 2CV.3.60, 21st European Biomass Conference & Exhibition: Setting the
course for a biobased economy, Jun. 3-7, 2013, Copenhagen, Denmark. (Poster)
Y. Fukutomi, T. Yanagida, M. Kanna, Y. Matsumura: Effect of inhibitors from hydrothermal
pretreatment on ethanol fermentation, 3DV.1.7, 21st European Biomass Conference &
Exhibition: Setting the course for a biobased economy, Jun. 3-7, 2013, Copenhagen,
Denmark. (Poster)
R. Matsumoto,T. Aki, Y. Okamura, T. Tajima, Y. Nakashimada, Y. Matsumura: The behavior of
sugar in hydrothermal pretreatment of laminaria, 2DV.2.3, 21st European Biomass Conference
& Exhibition: Setting the course for a biobased economy, Jun. 3-7, 2013, Copenhagen,
Denmark. (Poster)
P.P. Phothisantikul, T. Leewisuttikul, T. Charnpanitkul, M. Kanna, Y. Matsumura:
Dissolution of model biomass in hydrothermal pretreatment in semi-batch reactor, 2DV.2.4,
21st European Biomass Conference & Exhibition: Setting the course for a biobased economy,
Jun. 3-7, 2013, Copenhagen, Denmark. (Poster)
S.Inoue, D. Nakahara, Y. Matsumura: Direct observation of CVD synthesis of carbon nanotube
using quadrupole mass spectrometry, P20, 14th International Conference on the Science and
Applications of Nanotubes (NT13), Jun. 24-28, 2013, Helsinki, Finland. (Poster)
<受賞>
T. L.-K. Yong, Y. Matsumura: Supercritical water gasification of phenol and benzene as
lignin biomass model compound: Detailed reaction pathways and kinetics, Poster Award, 21st
European Biomass Conference & Exhibition: Setting the course for a biobased economy, Jun.
3-7, 2013, Copenhagen, Denmark.
<その他>
Yukihiko Matsumura: Scientific Committee, Paper Review Expert, 21st European Biomass
Conference & Exhibition: Setting the course for a biobased economy, Jun. 3-7, 2013,
Copenhagen, Denmark.
Yukihiko Matsumura: Chairperson, Session 2DO.10, Raw Materials, Pretreatment and
Sustainability / 2, 21st European Biomass Conference & Exhibition: Setting the course for
a biobased economy, Jun. 3-7, 2013, Copenhagen, Denmark.
松村幸彦: 大会実行委員, 日本環境学会第39回研究発表会, 2013.6.15-17, 東広島.
松村幸彦: 世話人,第10回広島大学バイオマスイブニングセミナー, 2013.6.26, 東広島.
松村幸彦: 解説,第10回広島大学バイオマスイブニングセミナー, 2013.6.26, 東広島.
神名麻智: 司会,第10回広島大学バイオマスイブニングセミナー, 2013.6.26, 東広島.
○関連トピックス
昨年、バンコクで開催した国際会議のJCRENですが、今年度は11/25-26に東広島で開催です。案内を
添付します。ご参加いただければ幸いです。
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